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Sapporo | Feature

こだわりゆえに牧場までつくってしまった、道産子のソウルフード・ジンギスカン専門店〈いただきます。〉

ディナー / ランチ

北海道に訪れたのなら是非とも味わいたいのがジンギスカン。羊肉をもやしや玉ねぎなどの野菜と一緒に凸型の鍋で焼く郷土料理で、“北海道遺産”にも登録。幅広い世代、家庭から花見などの行楽で親しまれています。しかしながら、札幌だけでもジンギスカンのお店は数多あり…どこへ行ったら本物の味がいただけるのかわからないという方も多いはず。そこで紹介したいのが、ススキノにある〈いただきます。〉。オーナー中島さんのジンギスカンにかける熱い想い、そして絶品ジンギスカンの食レポをお届けします。

北海道が誇るソウルフード、ジンギスカンとは?!

ジンギスカンの起源については諸説ありますが、戦時中に軍需物資として羊毛を生産する為に牧羊されていた羊を屠畜した際、日本人の舌に馴染むようクセの強い風味をタレで抑えて食べるようになったのがはじまりとされています。盛んに羊の飼育が行われていた日本ですが、大戦敗戦後は牧場の数が激減。現在、日本の羊肉消費量の99.5%を輸入肉が占めているのが実情なのだそう。

そんななか、北海道産羊肉を味わえるジンギスカン専門〈いただきます。〉は、牧場直営という強みを生かし、1000頭に2.5頭しかいない高級品種である北海道産サフォークを独自品質で提供する世界でただひとつのお店として、注目を集めています。2012年のオープンまで、なんと構想28年、調査20年! オーナーの中島康晴(なかじま・やすはる)さんにお話を伺いました。

自らが羊飼いになることから始まった挑戦

かつて、とあるフレンチレストランで食べた美味しい羊肉ロースト。北海道産の羊の味に感銘を受けた中島さんは「ジンギスカンのお店を開きたい」と、道内の羊牧場に問い合わせたのが、全く相手にされなかったのだそう。心の奥底に、「国産羊肉でジンギスカン店をつくり、美味しい感動を共有したい!」という思いを燻らせていた中島さんは、自らが生産者になるしかない」と決意。

しかし、追い求める羊の質の実現には長い道のりがありました。5回にも及ぶ倒産の危機を迎えながらも、中島さんは信じ合える仲間に支えられながら地道な調査などの現場で第一線に立ち、ついに理想とする肉質の北海道産サフォークを完成させます。

そのモチベーションは、「日本の食文化に抱く思い」。1次産業である羊の生産から美味しいジンギスカンをお客さんへと繋ぐ3次産業までを一手に担うことで、安心して食べることのできる安全な羊肉を、自信を持って提供できるという考えが中島さんを突き動かしたのです。

『いただきます。』で提供しているサフォーク肉は中島さんがこだわり抜いた“独自品質”。月齢に応じた餌の配合調整や屠畜前の給水制限、ストレスフリーな環境などの試行錯誤を繰り返した末にたどり着いた飼育法により、キメの細かい肉質を実現したのだそう。

長くなりましたが、『いただきます。』の看板メニュー「ジンギスカン(980円)」を実際に食べてみることに。炭火で十分に温まった特製のジンギスカン鍋に羊脂を馴染ませ、ツヤの良いお肉を早速焼いていきます。

折角の新鮮なお肉なので焼き加減もほどほどに、というより立ち上る香りがたまらな過ぎて早く食べたい…。タレにつけていただきます! 口に入れた途端、これまでジンギスカンに抱いていた常識が音を立てて崩れていきます。羊肉特有の香りのクセが一切立たず、肉本来の甘みが多幸感と共に押し寄せてきます…。

夢中で食べ進めているうちに気がつくのは、その味付けのシンプルさ。本来そのクセの強さをタレで抑える為濃い味つけのものが多い中、ここのタレは他店に比べ薄味。肉本来の強い甘みとの完璧な調和を演出するため、ジンギスカンダレの発案者である近藤知彦氏が監修した特製のタレを使用しているのだそうです。

続いて脂身の多い「ロース(1790円)」を。こちらもシンプルに、ジンギスカンには珍しい塩と胡椒、レモンでいただきます。前のめりになりながらパクリと一口で。舌にしなだれる品の良い脂に思わず目を閉じます。

中島さん曰く、「羊肉は脂の溶ける融点が体温より高いので身体に吸収されにくい。うちで出す肉はこの融点をギリギリまで下げているからヘルシーなのに脂の口どけの良さが抜群に良いんです」。

それぞれの部位の魅力を引き出すため、一枚一枚手切りにこだわるのも魅力のひとつ。スジ・肉・脂の調和を最大限に楽しむべく部位別のカットで提供される「肩ロース(1790円)」はその抜群の食べ応えと噛むたびに溢れ出る旨味が堪りません。

鍋を囲むようにじっくりと焼かれていたもやしと玉ねぎもお忘れなく。ジンギスカンから溢れ出た良質な脂がじんわりとしみ込んだ野菜はそのままでもお肉と一緒に食べても格別な美味さ…。

鮮度が命の「レバー(980円)」は直営牧場を持つ〈いただきます。〉ならではのメニュー。レバー特有のモソモソとした食感や臭みがほとんどなく、羊肉の奥深さを垣間見たように感じました。

ディナー / ランチ, 焼肉

Itadakimasu.

[ジンギスカン 羊飼いの店 『いただきます。』]

Hours
Sun.
11:30 - 23:00 (L.O.22:30)
Mon.
11:30 - 03:00 (L.O.02:30)
Tue.
11:30 - 03:00 (L.O.02:30)
Wed.
11:30 - 03:00 (L.O.02:30)
Thu.
11:30 - 03:00 (L.O.02:30)
Fri.
11:30 - 03:00 (L.O.02:30)
Sat.
11:30 - 03:00 (L.O.02:30)
Public
Holiday
11:30 - 23:00 (L.O.22:30)

「やはり北海道産の羊肉を専門に取り扱う唯一無二のお店だからこそ、他所では食べられない独自品質を生む点にはこだわりました。海外からのお客さんも、うちの北海道産羊肉のジンギスカンを是非堪能してほしいですね」と、にこやかに語ってくれた中島さん。 ちなみに、中島さんが国産にこだわるのにはもうひとつ理由がありました。開店調査のなかで、日本だけでなく世界を取り巻く食糧危機問題の実情や、農畜産業の厳しさと偉大さに気付いたのだそう。「大袈裟に聞こえるかもしれないけれど、僕はこの店と牧場を通じて日本の子供達が夢を語り挑戦する世界を作りたいと本気で思っているんです。外国からの輸入に依存するのではなく、自分たちで食べ物を生産できるということの大切さ、そして国の底力を、羊の飼育やジンギスカンを通じて訴えていきたいと思っています」。そう語る中島氏の眼差は一つの曇りなく真っ直ぐに未来を見据えていました。 そして、取材の最後にどうしても気になった〈いただきます。〉という店名の由来を伺うと「羊の飼育から関わって改めて気付かされるのが我々は生命をいただき生かされ、そして感謝の気持ちを忘れてはならないということ。そして〈いただきます。〉は外国語には訳せない、美しく誇るべき日本語のひとつなんです。僕たちは『いただきます』という感謝の言葉を世界語にするべくこのお店から発信していく。そんな思いが込められているんですよ」と答えてくれました。 中島さんをはじめとした、北海道の食文化を支える仲間たちの並大抵ならぬ努力と情熱の末に完成した〈いただきます。〉のジンギスカンは、食べたらきっと一生忘れられない素敵な時間を演出してくれるはず。札幌を訪れたからには、足を運んでみてはいかがでしょうか。

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Writer

editor / photographer

小林昂祐

日本

山と旅と暮らしを取材しています

北は北海道、南は沖縄まで、自然とローカルで暮らす人たちを取材しています

Areas Karuizawa
Speciality 登山、探検、ローカル
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